師匠と共に
つまり、こう言う事である。善さんは、不安を抱えながらも勝負を賭けるこの若い店主に、エールを贈ったのだ。粗末な材料を使おうとも、決して手等抜いていない。 一つ一つに職人としての細工を如何無く発揮し、その気概を店主に示したのだった。これが、凡夫の店主なら激怒したかも知れない。何でこんなに接ぎ接ぎの余り材料を使ったのかと。日本の経済を支える大企業の本店・支店が集中する大阪北区のオフィス街。開業するラーメン店等現われては消え、消えては現われる。そんな味で勝負する厳しい食の街大阪にあって、敢えて一台の屋台からスタートする店主。何より受け入れて貰えるのか・・それは、どんなに自分に自信があっても、他人が評価する世界なのだ。善さんも、その事に自分を賭けたのだ・・当時、沢木はやっと出来上がった屋台を見て悟り、自分はまだまだ善さんには追いつく事等出来ないと、修二は今、この会話の中で思った。
そして、会食が済み、道後の湯にたっぷり浸かり、部屋に戻った時だった。
善さんと沢木は対面し、茶を一杯飲んで居た。
修二と新川、信一郎は、夜の道後を散歩して来ると、出かけている。




