師匠と共に
善さんは頷いた。
「このラーメン屋の大将は、目の付け所がやっぱり違うんじゃ。オフィスビル街で店を出すにあたって、奇を衒うような事はせん、堂々と味で勝負をしたかったんや。その為には、立派な屋台は必要無い。2年使えたら、ほんでかまへん。けど、客に自分の信念をアピールしたいと思うとった。ほれが、新川家具への依頼じゃ。全部、任せる・・そう言う屋台を依頼して来た。わしも当時、修二君が今言うた通りに考えた。いかに客に来て貰うか。来てさえ貰うたら、味は自分には自信があるきん、勝負出来る、店主はそう考えたんじゃとな。ほな、他の屋台には無い、手でも入れたらええちゅうて。けど、違うとった、実際は善さんが店主と会うて話をして、大きな事を言うとるきんど、この人は、賭けに出たんじゃ、2年使うちゅうんは、2年これだけ打ち込んで受け容れられなんだら、ラーメン屋は出来ん言うその見極めじゃった。つまり背水の陣。強がり言うとる心の内は逆じゃ、不安で不安で仕方が無い。善さんはちゃんとその時見とったんじゃね。そしたら、一念発起した男の屋台は、立派な白木作りで無い、寄せ集めの木で構わん。けど、粗末を粗末と見せとうは無いきん、新川家具に依頼したちゅう事じゃね?善さん」




