師匠と共に
「修二。確かにこれから一旗上げようっちゅう、店主の姿はその通りや。そやけど、そこから先が根本的に違うんや。お前は、確かにこの男以外やったら、喜んで貰える屋台を作り、ほれで自分の仕事も果たせたやろ。そやけどな、何で新川家具が、オーダーメイドにこだわり守って来たんか、その根本を忘れたらあかんのや。思い出すわ・・この沢木が入って来て・・こら只者では無い奴やと、わしも思うた。たった1日で、この家具店で使用しとる材料を覚えて、仕入金額まで頭に入れとんねや、どなな奴かいなとびっくりしたわ。新川社長が、気に入って入社させたちゅうから、わしも納得はした。せやけどな、沢木の考えは、全部教科書やねん。今、修二も言うたやろ、お客さんはこうやろって、自分で、決めつけとんねん。ほなな方程式はあらへん。このオーダーメイドこそは、客と、木材と、出来上がった家具の温もりや。新川社長に怒鳴られて、わしに怒鳴られて、分からへんちゅうてぼろぼろ涙を零しもって、ほんでも沢木は何日も、わしの側を離れんと、じっと見よった。うっとおしい蝿じゃ言うて、わしも又怒鳴ったわ。ある日、ぽつんと沢木は言うたんや、善さん・・わし、ちょびっと分かった事ある。善さんは、木の生命を生かしとる・・これは、職人で無かったら出来ん事じゃね、機械では絶対作れんですちゅうて・・わしゃ、やっとお前に心言うんが理解出来たか、ちゅうた。わしは、この時沢木に言うた。これまでのお前は、ど偉い才能を持っとんかも知れん、そやけど実は、それをお前自身が忌み嫌うとったん違うか?ほんで、ここへ来たお前のわしが見る印象は、眼が死んどった。その若さでどなん眼に合うたんか知らんのやけど、今木の心が分かる言うたお前が、心底そう思うんやったら、この先見込みがあるわ・・そう言うた。ほんなら、この沢木だっきゃ、赤ん坊見たいに人目も憚らんと、ぎゃあぎゃあ声を上げて泣き出したんやわ・・はは、思い出すのう」
新川も、




