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師匠と共に
「新川社長、うちうちの家族水入らずで、今夜は楽しみましょう!」
「おう、沢木が、えらい張りきって段取りしてくれた言うよってに、楽しみや。善さん、今晩は全部忘れて飲もや無いかい」
「へえ、済まんこってすわ。こなんして貰うて、わし、人生冥利に尽きますわ」
「はは、大袈裟な事言いないな、善さん。仕事仕事ばっかりで、充分に休みも取らせられなんで、済まんかった。どうしても孫の世話をしたいちゅうんで、わしもこれ以上は引きとめられなんだけど、新川家具の屋台骨を支えてくれた、大功労者やさかいにな、是非、四国で沢木と一緒に飲みたいちゅう希望位お安いご用や、ははは」
沢木は、無償に嬉しくその言葉を思い、善さんの手を取った。新川家具最後の送別に自分の所で飲みたい等の言葉は、泣かせる話だったからだ。善さんも、強くその手を握り返した。
「おう・・最近は仕事師の手になったの、沢木」
「はは・・善さんの天下一品の手には、まだまだですわ、若造ですきんね、わしは」
「ははは」




