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師匠と共に
沢木には、それがぴんと来た。それは、長年新川家具店を勤めて来た善さんが、現役を退くと言う事であろう、その長年の新川家具店を支えてくれた慰労の為に、身近な者達で訪れると言うものだろう。新川は自分の退任と同時まで、善さんに退職を待って欲しいと慰留した。しかし、善さんは二人の同時引退は、駄目だ。従業員達に動揺を残すし、自分はあくまでも新川家具に雇われの身、経営者と同格にはならないと。その古風さこそが、新川家具の名職人と言われ、屋台骨として支えて来た善さんと言う人物なのである。
「はて・・何がええかいのう・・」
沢木はそう言い、しばらく考えていたが、
「よっしゃ。あれにしよ・・」
数日後、松山の道後で、久し振りに顔を合わせた沢木と新川社長、善さん、信一郎HZK専務、佐久間修二であった。沢木は喜んだ。




