白城(びゃくじょう)
「今の会社譲っての、僻地へでもどこでも行って、何でも屋で家の修理請けたり、買い物代行したりしよか思いよんじゃ。実際鉱物産地巡りしよって、山奥で不便な生活抱えよる人が大勢居るの見て、わしゃあ何とかせんといかんと思うた。勿論、ほななんでは食うていけん。ほやきん、お前も、先祖代々受け継いで来た田畑じゃ。わしが、食うていけるばでもしょうか思うての」
和子は、
「・・今更あんたに何も言わんよ。決めたら即行動する人やきん。ほんでもな、よう考えてつかよ、うちは娘二人居るんじゃきん、その娘嫁に出すか、家継がせる気じゃったら、その先の事も考えとかないかん。孫が出来、色んな事もこれから先ある。その時、あんたは体じゃって動かんかも知れんので?ほなな事考えんな?私はな、結婚以来ずっとあんた見て来た。ほやきんど、ほんまに家族言うんを第一に考えてくれたな?仕事仕事で、殆ど家に居らんかったし、どうにか食べて行けるようになったら、今度は今まで築いて来たもん壊して一からやる言うんな?確かにあんた見とったら、何やっても食べて行けるんかも知れん。けど、私はその度に、はらはらして、怪我せえへんか、体壊さへんか、そなんずっと思いもって、この先生きて居とう無い。あんたに、こなん事言うたん初めてじゃきんどな・・私は、付いていけんと思うたら、病院は辞める。ほやきんど、あんたは、自分が今一番好きな道じゃと思いよる、今の仕事を捨てる言うんは、到底納得出来んきん」




