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白城(びゃくじょう)
沢木が帰り、いよいよ秋本番に向けて、各鳩舎の動きも活発になって行く。
沢木の自宅周辺には、もう早稲のコシヒカリの収穫が始まっていた。沢木の家も、約1町歩近い水田を保有しているが、これまで殆ど農協に委託していて、自分で農機具を動かす事は無かった。この夜、
「え?来年から米作るんじゃて?何でな、急に」
和子が見ていたテレビを切り、沢木に向き直った。
「お前も、最近はどんどん若い子が入って来て、だんだん仕事も難しゅうなんじょるし、事務の仕事は、実際残業があっても、サービス残業じゃろが?中には毎晩10時頃まで仕事したり、自宅に持ち帰ってやんじょるもんも多いっちゅう事やろが」
「まあ、ほうよ。けど、しょう無いがな、ほなん事は勤めしよったら、どこでもあらいな。そうじゃろ?駄目じゃ思うたら、辞める人も多いきんどな」
「来年、新川常務が退任する。わしも、HZKを退社しよ思うとんじゃわ」
「え・・!・・ほやって、羽崎会長、佐久間社長がやってくれ言うて、今、取締役受けとんじゃろ?実際のとこ、HZKの仕事が大半じゃろがな、どなんすん?」




