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白城(びゃくじょう)
「わしは、人の手の内を聞いたりはせんきん、お前に聞く事も無いきんど、じゅん・・何でお前2年ちゅうて短い競翔復帰をすんじゃ?それが異ちゅうて言うもんも中には居るわ」
松本が言うと、沢木は
「ほれは、済まんけど、おいやんにも言えん。ほんで、さっきおいやんも言うたように、競翔っちゃ、参加させて成績を追及する・・つまり、自分のやって来た成果をレースで見極めるような側面も確かにあるきんど、基を辿れば、育てるちゅう事に尽きるんと違うな?ほんで、それは昔のわしには出来なんだ事じゃ。今も長期の視点では、わしはとても出来ん事じゃきん・・ええな?こなな答えで」
松本は頷き、
「充分じゃ。競翔・・育てる。それが真理とわしも思う」
沢木が、その先に何を自己の中に置いているのか、そんな事は松本にもどうでも良かった。が、たった2年しか競翔に戻らない、と宣言した理由は何なのかが、気に掛かるのであった。




