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白城(びゃくじょう)
その沢木は、松本の所へも顔を出したのだった。
忙しそうに奥で農作業をする松本に、少し遠慮がちに沢木が声を掛けた。
「忙しげなな、おいやん」
「おっ、じゅん・・久しぶりじゃの。なに、明日雨降るかも知れんきん、芋掘りよったとこじゃ。持って帰れ・・あ、お前んとこは何でもあらいの、はは」
「手伝おか?」
「はは、もうあらかた済んだ。あっちで話しよか」
松本はこう言う人だった。だからこそ会員にも慕われ、周囲の人望も篤いのであった。
少し待っていると、松本が裏の縁台に、茶を運んで来た。ちなみに、松本の伴侶幸恵は、今娘の家に滞在中で、家には彼一人だった。それ故に人との会話も楽しみの一つである。全てに几帳面で、まめに動く松本が、家内の留守中に不便を感じる事は無いが、洗濯・家事も一人だとちょっと食事を作り過ぎたり、洗濯物をするのも洗剤が勿体無いわのうと笑っている。




