白城(びゃくじょう)
「ははは・・沢木さん、面白過ぎますわ。腹・痛・・飯食えませんで、はは」
「はは、ここの料理人は、京都の老舗で腕を磨いて来た一流よ。まあ、食え、食え」
環ととり・・どうなるのか、この先は分からない。しかし、今はこれで良い・・沢木は思った。
浜田の一件はどうにか、揉めると言う所まで発展する話では無かったものの、やはり沢木を敬遠する流れは確かにある。中予連合会の中にも、そう言う違和感を持つ者も少なくなかった。しかし、沢木はそう言う雑音をいちいち気にして、競翔に迎えるような心に余裕は無かったのかも知れない。たった2年。それも若鳩を稚内GNに参加させる、常識では考えられない事である。それを実行しようと言うのだ・・この男は。
浜田は、その様子を見守る事に決めた。同じ事はしないが、結果を見て、自分もこの先の競翔を考えて見ようと思った。
人の心は複雑。個々の人に、自分を合わせて生きる事など出来はしない。自分は、所詮個なのである。が、人を思いやったり、気遣ったり、そう言う暗黙のルールが存在するからこそ人間社会は成り立つのである。世に個人主義が氾濫している今、それは自分主義、利己主義と言い換えられる。そのルールが崩れ去れば、もはや人間社会とは言えない。弱肉強食の世界の中で生きるしか無くなるだけだ・・・。




