814/3046
白城(びゃくじょう)
「わあ、ご免なさい!カイご免ね、うち何もしてやれんで」
久々に見た娘の顔だった。ずっと由香里に付きっきりだったので、顔を合わす機会がぐっと減っていた。
少し痩せてほっそりしたかな・・沢木は思った。
「あれ・・親父・・泣いた?ひょっとして」
慌てて沢木は、鋭敏な娘の眼から逃れ様と、顔を反対に向け、
「花粉症じゃわ・・アホ」
「きゃは・・親父も花粉症になるんじゃな」
環が笑った。この顔を見たら、由香里の順調なリハビリが理解出来る。聞く必要も無く、又環も当然言う事も無かった。
「飯・・食べるか?とり君も誘うてやれや」
沢木が言うと、
「え!構わんの?」
「殆どデートも出来んかったじゃろが?ちょっとはわしも気を利かしたるわ」
「ほな!うち今から電話する!」
環は嬉しそうな顔になり、とりに電話。その間に沢木は、もう近くの料亭に予約を取っていた。




