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白城(びゃくじょう)
「わしの使翔法では、2年したら結果が出ると思う。いや、言葉が悪かったら訂正する。それだけの訓練やら、色んな想定をしとるからじゃ。敢えて、それが自分の信念と言う」
「よっしゃ・・ほな、わしもガタガタ言わん。ここまでじゃの」
立ちあがろうとした浜田に、
「浜やん、ほんまにええんか?次郎号の血筋こそ、太郎号に劣らん。みすみす資質を持っとる鳩を1000キロ位で終わらしても・・」
「ほれは、大きなお世話じゃろ?じゅん」
「余計なお世話かも知れん・・そやきんど惜しい。わしはそう思うだけじゃ」
浜田は沢木の事務所を出た。しかし、実は浜田は、涙を隠そうとしなかった沢木の心にある、すずらん号への強い思いを感じていた。それは、自分の太郎号への思いより遙かに強いものだと思った・・。何かが、浜田の心のわだかまりを少し緩めたかもしれない、この日・・。
既に外は真っ暗になっていた。カイの餌をやるのが遅れていた事に気付き、沢木は慌てて2階へ。すぐカイがじゃれついて来る。遅いぞと言わんばかりに。その餌やりの最中に、環が姿を見せた。




