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白城(びゃくじょう)
頭を下げたままの沢木に、浜田も
「済んだ事じゃ、お前も苦しみ、わしも苦しんだ。それは、もうええ」
顔を上げた沢木を見て、浜田はどきっとした。沢木は毀れる涙を隠さなかった。そして・・
「浜やん、互いに自分のエース鳩失うたんじゃ。気持ちは分かる。そやきんど、わしはこの運命からはどうやら逃れられん・・。何故なら、すずらん号の残した3羽の内、香月博士に渡った1羽がすみれ号・・その血統は香月系を目指し、又一方でわしが鎌じいに提案した夜風系と交配されとる。なんちゅう因果なんじゃろう・・わしは、この越えとう無い壁を又登らないかんのじゃ。浜やん、わしは自分の夢の為に、こなな人から馬鹿げた事じゃと言われるきんど、稚内GNレースを目指す。それもたった2年しか猶予も無い・・」
「・・わし見たいな頭の回らん男には、お前の言う事やか分からん。そやきんど、何で2年じゃ?お前の夢がそうじゃ言うんなら、わしは別に勝手にやりゃええと思うど。それに対しては、言える立場では無い」




