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白城(びゃくじょう)
又ぶすっとした表情で、顔が見る見る興奮して赤くなりつつある浜田に、
「あのの、人間っちゃ足を踏み外したらいかん事が3つある。こなん事言うつもりも無かったきんど、一つは、親に対する感謝の気持ちじゃ。親っちゅうんは、実の父母だろうが、師匠だろうが、先生だろうが自分を真に思うてくれる人に対してじゃ。二つは、人は他人を傷つけたらいかん、心も体にもじゃ。三つ、人は、信じる気持ちを忘れたらいかん。何も信じれん心には、魔が生じる。浜やん、お前2つも道踏み外しかけとるど、分かるか?」
「何い・・わしが何時そなな・・おい、又いい加減な事言うてわしをたぶらかすつもりか、こら」
沢木は呆れたような顔になると、
「いよいよしょうの無い奴じゃ・・又おらばな(怒鳴る)いかんのかい?こら、浜やん、今の印刷会社やれよん、誰のおかげぞ?お前が道踏み外して人刺して、その引き受人になってくれたん誰ぞ?刑務所の中で印刷覚えて、ほれで印刷会社やる時、保証人の判ついてくれたん誰ぞ?」
さっと浜田の顔から血の気が引いた。




