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白城(びゃくじょう)
鷹揚として、余りべらべら喋る男では無いが、言う時にはスパッと正論を言う。イクちゃんは、言葉を失った。洋司が、
「そうなんじゃ。ちょびっと事情があってな、済まんな、未だ由香里は戻って来んのじゃ」
「そう・・ですかあ・・」
がっかりした表情になり、イクちゃんは言う。折角、喫茶店白城がオープンし、堂々とこれで由香里とも会う事が出来ると思っていたイクちゃんも、この2ヶ月、週に2回は顔を見せているが会えずに居る。その苛立ちが、さっきの質問であった。3者3様・・とは言え、ヤマチューとヒデ君には、紳士協定のようなものが既に結ばれている。
そのイクちゃんに、ター君はもうすぐ始まる競翔の話題をすると、談義が始まって行く。
洋司は微笑みながら、案外骨太なんはター君かも知れんな・・と思った。全てに動じない。我が道の何たるかを知り、自分に即した形で背伸びをしない。こう言う人物は信用出来ると思う。幾人かの客が入れ替わり、何度目かになる来店だが、浜田が訪れた。




