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白城(びゃくじょう)

 由香里は、にこっと笑い、


「嬉しい・・でも、今は泣かんきん。うちはまだまだやと思うとるきんね」


 環が、どれだけ佐々木由香里に対してここまでやって来たか、津島師長は、口だけ先行してしまう頭でっかちの者だと思っていた彼女だったが、いかに縁続きとは言え、その努力は充分に認めていた。

 世の中は不公平だらけ。正義が正義として通じず、お題目は正論を述べるのみ。正論など誰でも吐ける。しかし、実行力の伴わない正論は、教科書を読んでいるだけの事。教科書を丸暗記して誉められる社会、テスト一辺倒重視の社会だから、矛盾が生じているのである。動物社会は、もっとシンプルであって良いと思うのは私一人か・・余談が過ぎた。

 そして、刻々と秋レースは近づいていた。

 つくつくほうしが鳴き始め、蟋蟀の合唱が始まる頃、


「何で由香里ちゃん戻んて来んのですか?」


 イクちゃんが少し苛立ったように洋司に聞いた。

 しかし、隣に居たター君が、


「由香里ちゃんには由香里ちゃんの事情があるじゃろ、イクちゃん、洋司さんが何も言わんのじゃきん、聞くもんで無いじゃろ、それは」

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