785/3046
白城(びゃくじょう)
口からは血が出ているし、掴まれた腕も真っ赤になっている。ヤマチューは、近隣でも名の通った悪だ。まともに喧嘩しても敵わないだろう、彼は思った。しかし、この理不尽な行為は・・。ヒデ君の憤慨は収まりそうにも無かったが・・
洋司が慌てて後を追いかけて来たが、ベンチに座った二人を遠巻きに見ていた。
ヤマチューが落ち着いた声音で、
「ヒデ・・わしは、由香里ちゃんが愛媛大学で手術するんを知っとった」
「え!」
ヒデ君の顔が強張った。
「わしはな、醤油屋やきん、配達にも行くんで、聞かんでもええ話も耳に入るわ。ほれでもな、これは絶対言うたらいかん思うたきん、黙っとった。由香里ちゃんは、わしが手術の事知っとる言うんも分かっとる。ほやきん、黙っとってとも言われとったきん」
「わし・・今知った。ほなん事・・おかしいとは思いよったんよ。なんぼ通信大学の夏季ゼミでも、そなん1ヶ月半も姿見えんのおかしい思うたし、秋から佐々木鳩舎一本になるちゅう話も・・」




