白城(びゃくじょう)
「この在庫はのう、仙台に1セット、北陸に2セットあって、その内1セットは、かなり古いきん陽に焼けとるわ。至急送って貰うても、仙台からの送品は明後日の午後になる。1セットだけでは間に合わん。この顧客は、オープンを明々後日に控えて、突貫工事をやっとる。納得して貰って、このタイプと、このタイプを2つ用意して持って行った。客は、納得してくれて、今度は春用で用意した、もう1セットも使用してくれるっちゅう話になった。木田君、たった5万円の仕事じゃ。何でここまでせにゃならんのか・と、既に君は思うたし、こななつまらん時間をわしのとこで過ごしとる間に、他にもっと大きな受注をしてくれる顧客に訪問出来るのに・と、思うとるじゃろ?そわそわしとる君を見とったら良う分かる。そやきんどの、これも営業ぞ?企業は、顧客あってこそ成り立つんじゃ。もう一つ言うたろ、君は去年名古屋で営業成績一番になった。ところが、今年はいきなり不慣れな中国・四国地方へ転勤じゃ。この地区は家具屋が密集して、人口も少ないし、激戦区じゃわ。君はそれを光栄に思うたか?何で?と、思うたか?」
「ちょ・・いいかげんにしてくれませんか?」
木田が顔を赤くして、少し興奮気味になる。
「ああ・・最悪じゃのう、木田君。図星指されて興奮するようでは、トップ営業マンにはなれん、去年がフロックやと言われるど」




