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白城(びゃくじょう)
数分後であった・・。閃竜号は、高く舞う・・そして、その姿は一瞬で視界から遠ざかった。それは、この鳩にはもう既に帰路が見えていた如くに・・
「飛んだで!」
沢木が振り向くと、女性の姿はどこにも無かった・・
「今の夢か?幻だったか・・おかしげな事もあるもんよのう・・」
沢木の足元には、透明な親指大の水晶が落ちていたと言う。
「権現様の化身かも・・」
沢木は、石鎚山頂の天狗岳に向って何度も深くお辞儀をしたのだった。
この現象は、由香里にも起こっていた。
うとうととしていた由香里が目を覚ますと、八重子が居る。
「起きたん?由香里・・どなんしたん、きょろきょろしてからに」
八重子が聞くと、
「今・・夢じゃったんじゃな・・うち、じゅんおっちゃんと山の上に行って、閃竜号の放鳩訓練見とった」
「ま、ふふ」
八重子は笑った。もうすぐ転院となる。由香里はかなり両足を動かせるようになっていた。
「繋がった・・」
突然、清治が言う。それは高校に通う授業中の事、周囲の笑いを誘った。




