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白城(びゃくじょう)
一陣の風がこの時吹いた。くったくの無い笑顔の初老の婦人は、どこか気品があり、又見ず知らずの沢木の横で動こうとせず、一緒に閃竜号の飛び立つのを待った。少し夏と言うのに肌寒い高地特有の風が、そう高く無い木々を揺らし、せり立つ屹然とした岩の横からひゅうと音を立てる。
沢木は、婦人に向き・・少しまばゆそうな顔をしながら、
「大変失礼じゃと思うきんど・・不思議な女性じゃあ・・わしが今まで出会うた事の無いもんを感じます」
「まあ・・ふふふ。じゃあ、私も言って良いかしら?」
「ええ・・」
沢木は女性の顔を見る。気品のある、60半ばであろうか、さぞかし若い頃は輝くような美しい女性だったろうなと思った。非常に端正な顔立ちをした女性だった。




