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白城(びゃくじょう)

 少し興奮するように頬に赤みを差しながら、話を続ける浦部だった。


「しかし・・この鳩の資質は、どこにあったのか・・それは全体のバランスもさる事ながら主翼・副翼に見る事が出来ます。紫竜号は、向い風にはその豊かな副翼を利用し、天空高く舞い上がり、逆に追い風の時にはその主翼で持って推力を優先させた。慣性の法則とは、風も常に向かい風なのでは無く、追い風もある。又、風にも水と同じような波打つ流れがある。よって、無風に比しても殆ど分速は関係無いと言う理論です。無論多少の条件や、向かい風・追い風が均衡しては居ませんから。と、なると何でいち早く香月君が、紫竜号のその天性の資質を見極め、そう言う視点で訓練し、育てて来たのか、やっと我々も後年になって理解出来た訳です。故に天才と呼ばれる少年が存在した訳ですが・・驚くのは、そんな事はもう既に気付かれ、実践して居られたと言う沢木さんの凄さでしょう。ここまで香月君も又、自分の方向性や考えを看破されたのは、脅威だと言って驚いたと同時に、自分の考えを実践出来る方は、この沢木さん以外に居ないと、そう感じたそうです。自分は、実際又こんな天才競翔家と一緒にやりたいと強く思っていますが・・しかし、俵さん。それは適わぬ夢でしょう。確かに清竜号なら成し得た夢であっても、その血は次代に受け継ぐべき力は弱いかも知れません。清竜号は、花川美里さんの雨竜号、そして香月暁号、風神系の成し得た偶然の傑物。しかし、初霜号系統とは、もっと未来を見据えた、競翔鳩の改良に繋がる事では無いでしょうか・・」

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