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白城(びゃくじょう)
「聞かせてください」
俵は身を乗り出した。
「ここまで追求した者は今まで香月君だけだったでしょう・・しかし、沢木さんは既にここまで30数年前持論を到達されていた。これが、大学での研究でしたらば、とっくに沢木さんは博士号を取得されていた事でしょう・・と香月君も驚いたそうです。その理論とは、紫竜号に見る、慣性の法則なのです」
「・・慣性の法則?ですか・・」
「そうです。競翔を考えるとき、東西に長く伸びる日本列島は、海や山岳を避けては考えられませんし、どこかで風が吹く地形を避けては、競翔鳩は帰舎出来ません。そんな時、紫竜号と言う天性の恵まれた資質、姿態を持ったこれ以上の無い完璧な競翔鳩が出現したのです。その類稀なる羽毛、主翼・幅広い副翼は、それまでの常識を覆すスピードを生み出したのです。単発的には、紫竜号に匹敵する記録はあります。しかし、これ程短距離から、長距離に至るまでそのスピード性を持った鳩は居ません。古今東西もう出現する事は無いでしょう」




