明日に咲く花
「あいつに抜かりはあるかいの、屋上に鳩舎を建てたんも、鳩舎は上下に動かせるし、車がついとるきん場所移動、風向きによってタラップの位置替えも、変幻自在よ。屋上に設置したんは、外敵も居らんし、蚊もそこまで上がってこん、犬を屋上に入れたんもそう言う事じゃし・・あいつのやる事は全てに抜かりは無いわいや」
「ますます・・おとろしい人じゃ・・秋レースは完全制覇すんや無いんな、沢木鳩舎が。何言うたって香月博士から初霜号系を預かっとるんやきん」
とりが、眼を輝かせながら言うと、意外にも松本は
「はて・・?じゅんの奴がそなな俗な記録を狙うて競翔するかいの・・・甚だ疑問じゃて・・」
「ええっ?何言うとんな、おいさん。これは客観的に見ても、これまでの経緯から見ても、誰でも思うとる事ぞな?おもっしょい(面白い)事言うな、はは」
とりが笑った。が・・松本はにやっとしたが、余り言葉は続けなかった。
そして、
「何にしても、今までに無かった秋レースにならいや、のう、とりよ。何ちゅうたって、白川系が、四国に入って来たんじゃ、磯川ペパーマン系、小谷系、香月初霜号系・・わしも、頑張らないかんわ、鎌足さんの夜風系の名に掛けてもの。」




