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明日に咲く花
松本の面倒見の良い事は定評ある事で、民生委員も昨年で役目を降りたものの、その人柄を慕って訪問する者も多い。
「くさ・・」
裏に回った途端、とりが顔を歪めた。何かを燃やした匂いが充満していたからだ。
少しして松本が縁台に・・
「おいさん、何燃やしたんぞね?臭いで、ここ」
「おろ?臭いかいの・・わしゃあもう慣れとるきんどの。・・何燃やしたちゅうたって、蓬じゃわい」
「蓬?・・なんで?」
松本が大仰な仕草をした。
「何をっちゃ、何で聞くんぞ、そなん事・・ああ、ほうか、お前んとこは八百屋の裏じゃ。それは出来んわの」
松本が今度は納得したように聞くと、
「いや・・分からんのよ、おいさん。蓬を燃やす訳が・・」
「ありゃ・・何年わしのとこ来とんじゃ?お前・・今まで知らなんだとかい」




