明日に咲く花
「よおちゃん、それは言うな言うたろが。わしなんぞの力は微々たるもんじゃ。運があった・・それだけの事じゃきん」
洋司は、
「ほれでもな、じゅんさん。人に出会うて、お付き合いしたり、世話になったり、世話したり・・わし等は社会の中で支えあって生きとるきん、人間ちゅうんですわ。その人の温かい気持ちを心から感謝し、今自分が生きて行ける・・そう言う事を忘れてはならんのです。そやきん、わしは、その事に感謝を忘れんし、こう言う言葉はじゅんさんは好かんかも知れんけど、言わせて貰いますきん」
「・・ありがとうな、よおちゃん。充分じゃ、その言葉で」
沢木の眼が潤んだ。
どんな美辞麗句を並べたとしても、言い尽くせぬ言葉、又、体の奥底から込み上げて来るこの喜びと感謝の気持ち、心を言い表したものだと洋司は言う。言葉に出さなくても、互いに信頼し合う間柄にあって、自分は家族の為に当たり前の事をしただけだ。だから、言わなくても良い。互いの気持ちは充分に分かり合っているのである。でも、沢木無くば、絶対にこんな手術を受ける事は出来なかったであろうし、又手術を望んだとしても数億円に上る莫大な費用が要るだろう。これも全て沢木が居たからだ。沢木の属する、香月達がその昔立ち上げたボランティア組織、ラブ・ピースが世界的規模となって活発な助成を行なっているからでもある。そのメンバーになりたい・・由香里は自分の目標をやっと見つけたのだった。




