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白城(びゃくじょう)
「おおっ!」
村本は声を上げた。全く雄鳩にこれまで無反応だった天城号が、何と言う。
沢木はこの時、
「香月博士、佐野君・・これが相性と言うもんですわ。鳩同士は分かるんですわ、我々が持ち得ぬ感覚で互いの気持ちが。わしの役目はここまでじゃ。これが上手う行くかどうかは分からん。後は村本君が、このエース号を生かすも殺すも。又、天城号のこの悲しい性を理解してやり、全身全霊で向う気持ちを忘れんかったら、競翔の神は微笑むやも知れん、どうじゃ?考え変わったか?」
村本は、深く頭を垂れていた。
「はい・・はい。沢木さん。わしは、この2羽の交配に、自分の人生を賭けるつもりでやります。やらせて下さい。佐野さん、わしは、エース号を必ず生かせるよう結果を出して子孫をお返ししますきん、お願いします」




