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白城(びゃくじょう)

 佐野が、沢木の言葉に打たれて涙を零した。何と言う高潔で清浄な気持ちを持った、とてつも無く大きい方なのかと。そして、自分の鳩の事もこんなに知り、理解してくれているのだーと。

 村本が首を項垂れた。そして、


「済みません・・わし・・わし間違うてました。不明でした、自分の血統に。沢木さん、ほんなら、もう一度、この天城号を見てつか・・お願いします」


「その必要は無い。香月博士、どうぞ」


 沢木の言葉は無情に聞こえた。しかし、香月はその意図を読んでいた。


「では・・」


 香月がバスケットに手を伸ばし、2羽の記録鳩を触診し、佐野に手渡した。香月は殆ど触診に時間を要する事無く、今度は天城号に・・そこでじっと凝視した。涼やかで、澄み切った優しい眼であった。佐野に天城号を手渡した。沢木はしかし、首を振る。


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