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白城(びゃくじょう)
「佐野さんとこの鳩は、注目して見とるきん・・」
少し口元を緩めながら、沢木が言う。
「理由は、只一つやきんど。ほんなら村本君、さっきの鳩見せてくれや。その雌、恐らく雄鳩を受けつけまいが?種鳩にしとっても子がとれん。白雪号系の主流ちゅうか、秘蔵鳩やのにのう・・」
ぎくっとした表情で、村本は意を決したように、
「何で、わしんとこに?天城号の何でそなん事まで分かるんぞね?沢木さん・・」
「いや・・そなん気がしただけじゃわ。3歳で種鳩にした見たいなきんど、白雪系の主流鳩なら、未だ4歳、5歳と飛べるじゃろうが・・まして、長距離鳩として産まれて来て700キロ止まりではのう・・」
今度は、村本は少しむっとした表情になり、
「それは、人それぞれの鳩舎の考えやら、又鳩それぞれの状態やら色んなもんあるん違うな?沢木さん」
香月と、佐野は黙って聞いている。沢木がまるで誘導するが如く、この村本の言葉を引き出しているように見えたからだ。




