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白城(びゃくじょう)
「行きましょう。電話を掛けるより直接家に行った方がええ。相手が構えるきんね、訪問の理由を求めて」
2人は頷き、沢木の車に乗り込んだ。
車で15分程度の、簡素な風景が広がる農村部であった。その一角に工場が見える。小さな工場であるが、屋上に鳩舎が見えた。
その工場の名は村本鉄工所とあった。
沢木が工場の事務所となっている、ユニットハウスに車を横付すると、工場の中に入って行った。
すぐ、真っ黒い眼鏡を掛けた神経質そうな、長身の細身の男が沢木と出て来て、香月達に一礼をすると、工場奥にある、応接セットに招いた。親子と、従業員1名が作業する小さな鉄工所で、さほど忙しいようには見えなかった。
沢木が、
「突然仕事中に訪ねて来て済まなんだな」
「いえ・・」
村本は、何事かとちらっと香月と佐野を見たが、短く答えた。
沢木が、
「ちょっとお願いがあるんじゃ。村本君とこのパンジャ号直子の、刺し羽の鳩見せてくれよ」




