白城(びゃくじょう)
時は常に変動している。その変動に合わせて、人も又自分も方向性を探りながら生きて行く。昨日当たり前に出来ていた事が、今日はもう出来ない・・そんな変化でさえも、受容せざるを得ない現実が待っている。しかし、抗えばそこには膨大なエネルギーが生じ、反対に打ちのめされるかも知れない。それでも進む人、遠回りであるが道を探ろうとする者・・それは、即ち大宇宙そのものの摂理なのである。
物事の真理を見定めよ。沢木は常に言う。自分の立つ位置を掴んだ者は、その変化に向う術を身に着ける事が出来ると言う彼一流の哲学がそこにある。
こうして、それから半月も経たない内だった。
香月が、佐野と一緒に沢木の所に訪れたのだった。佐野は、車で来ていた。大阪で香月と合流したのだと言う。何故か、佐野の車には5羽の子鳩が入れられていた。籠の外からでもそれは光芒を放つような鳩達に見えた。
「流石に・・これが、初霜号系かいね?」
沢木の言葉に、大きく香月も頷いた。
沢木は、1羽1羽その鳩達を触診した。その眼は鬼のように鋭かった。
佐野が一瞬硬直した。その眼は一点の曇りも見逃さまいと言う鋭いものだったからだ。




