白城(びゃくじょう)
物事の本質を見ぬく眼・・そしてそれを具現化し、実際に動かす事の出来る男。香月がこの沢木に託した思いは、察する事が出来るような気がした。今、沢木は川上氏がやろうとして出来ない事を実行に移しているのであった。
しばらくすると、又洋司の店は、仕事帰りの者、近所の者達で賑わい、活気を見せていた。
沢木が自分の事務所に戻って、しばらく経った時、とりが訪問した。
とりの関心は、もっぱら閃竜号にあると見え、熱心にこの日も見ていた。
「沢木さん、初霜号系は何時こっちに?」
「おう、もうちょっとしたら香月博士が又来られるかも知れん、そなな事言われとったわ」
「あの・・わし等、この前著名な3人がこちら来られて、ちょっと肝潰しとったんですわ、実際の所・・」
とりが言うと沢木もにこりとした。
「まあ・・驚かせるつもりは無かったんじゃきんど、どなな著名の人であろうとの?その場で居る限りは、とり君、競翔家よ。皆と同じ。そやきん、ちょっと淋しい気はしたわの、わしもそれは感じた。まあ、言うたら今の東予連合会は、おいやんの人柄もあるきんど、微温湯にどっぷり浸かっとった。もうちょい元気出さないかんのでは?わしは感じたんじゃ。皆が競合して切磋琢磨する所に、何事においても向上と言うもんがある。求めるもんはそれぞれ違うわ。何も同じ方向に向けと言うとる訳では無い。そやきんど、もっともっと井の中の蛙で無しに、大きな視点が必要と違うか?わしはそう思う」
「分かりました・・」




