白城(びゃくじょう)
「今は、経済成長期。どんどんビルが建って、山を崩して住宅が出来よる。そなな中で都会や、街中にあって昔っから競翔をやって来た人間も、肩身の狭い思いをする現状じゃ。鳩競翔するっちゅうんは、同時に周囲との理解を深めて、こちらの事情も考慮して貰わないかん時代じゃ。これが後、5年、10年経ったら、もっともっと顕著になって来るじゃろう。こないだ、とり君が言うとったように、若い世代や、次代に引き継ぐと言う事も同時に考えて行かにゃならん。実際そなな事を頭で分かっとってもの、行動出来る者は居らんのよ。そやきんど、いち早く川上理事長は実行されようとした。そこまで真剣に鳩競翔界の事を考えられよるお人やきん、無選挙で圧倒的な多数の支持で理事長をやられよる。理事長になった途端、あれ程反発しとった理事の一部もころっと態度を変えよったわの?それは、2年任期で交代案を自ら川上理事長が言い出されたからじゃ。もっともっと目先の事で無うて、将来を見据える為に色々考えられとる。あなな人物はそう居られるもんや無い。わしはのう、そやきん、自分なりに出来る事をやりよんじゃ。その考えは、川上さんの周囲の人間も同時に思いよる事じゃ、そやきんこうやって話は動く」
「・・分かりました。じゅんさんの深い考え、わしも出来るだけの事はしますきん」
沢木はにこっとして、そして店を後にした。




