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白城(びゃくじょう)
嗚咽が漏れた。その由香里の頭を撫でながら環は、
「甘えん坊の末っ娘じゃ。ええで、うちにはなんぼでも甘えてくれて。そやきんど、おばさんを心配さしたり、自分の苛立ちをぶつけたらいかん」
「うん・・うん・・環姉ちゃん」
しばらくそのままの二人だった。由香里の感情が収まった時、環はこう言った。
「外出よか・・手術以来出てないじゃろ?リハビリ室に行く以外」
「え・・ほんでも・・」
躊躇する由香里に環は、
「由香里・・あんた、頑張ったらいかん。あんたは、何でも一生懸命やろうとする。気持ちは分かる。そやきんど、いきなりフルマラソンって走れんように、ハイハイしてる赤ん坊がいきなり歩くなんて出来んのよ。あせったらあかん、あんたは、必ず歩ける。走れるようになるんじゃきん、まず今の現状を受け入れないかん。そこから苦しいきんど、痛いじゃろうけど、失った筋肉をつけていかないかんのじゃきんな」
「はい・・はい。環姉ちゃん・・」




