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白城(びゃくじょう)
佐々木家には、深々と頭を下げるしか無かった・・ようやく・・
こんな日が来る事なんて思っても見なかった。現実を受け止め由香里は、新しい自分の生き方を考えようとしていた頃だったから・・。
何度、床に頭を擦りつける如く沢木に感謝し、両博士達に感謝した事だろう。
が・・由香里の病室は、決してその成功をそのまま喜びとして具現化するのは、ほど遠い有様であった・・
「もう!こななん違うゆうたじゃろ!」
由香里は、八重子の買って来たスカーフのデザインが気に要らないと、それを投げ捨てた。
拾い上げる八重子の戸惑い・・その時病室のドアをノックする音が・・
病室に入って来たのは環であった。
機敏な環は、この状況を察したかのように、
「おばさん・・ちょっとかまへん?由香里と二人にさせて貰うて」
「あ・・はい。ご免ね、環ちゃん」
少し呆然としながらも、視線を避けようとする由香里。八重子が外に出ると、
「由香里・・どなんした」
途端に由香里がぽろぽろと涙を零した。すかさず抱き寄せる環。




