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白城(びゃくじょう)
由香里は、手術をしていた。世界的な外科医、S工大の京西博士と、動物医学だけに留まらず、今やマルチな才能を発揮する若き天才学者、香月の両名に依る執刀は成功を収めていたのだった。八重子は、その由香里につきっきりで、今愛媛大学に居る・・。
大手術の成功を受けて、その手術の難易さを改めて説明を受けた佐々木夫妻であった。
「必ず成功します」
その強い言葉を貰いながら、どこか晴れなかった不安。
「又歩けるんじゃったら、こんな足要らんきん」
娘の強い決断・・しかし、自分の両足首が無くなると言う心の葛藤。それは親としても、又由香里個人の心の中にもあった筈。
改めて聞いた、「非常に難しい手術でした・・」その京西の言葉にやっと我に戻った佐々木夫妻だった。それは、「必ず成功させます!」と言う香月自身の力強い言葉は、佐々木家を安心させる為の思いやりでもあっただろう。「我々には失敗は許されないんです」 京西博士も言った。




