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変化する日常

空を見上げながら、沢木は続けた


「競翔家、愛鳩家・・その線引きはどこにあるんか、何時も悩むわ。どこまでは競翔家で、愛鳩家なんか、どこまでやって、何を求めるんか・・わしが、二人にアドバイスすると言う形を取って今閃竜号を競翔したら、二人は絶対心を痛めるじゃろう・・香月博士が紫竜号に憎まれる程に鍛え、育てた気持ちがよう分かるんじゃ。川上氏も、最後は香月博士の崇高で誰よりも深い愛情による訓練だった事を知り、そしてそれが紫竜号と言う鳩を救う手段だった事も悟ったんじゃ。その手記に感動して競翔鳩を飼う気になったんじゃろ?由香里ちゃん、動物を飼う言うんは、今その子犬のカイを可愛いと思うて頭を撫でよる気持ちと同じじゃ。子の内は思いっきり愛情をかけたらええ。そやきんど、自然界の中で巣立つ言うんは、自分自身の力で今日の糧を得る事、敵から身を守る術を見につける事なんじゃ。鑑賞鳩を飼うんならそれでええ、思いきり愛情掛けて大事にしたらかまわん。そやきんど、何百キロ、何千キロ離れた所から戻らないかん競翔鳩は、与えられてぬくぬく育つ鑑賞鳩とは全く違う。今日の糧、明日の身を守らなならん厳しい自然と闘わにゃならんのじゃ。その競翔鳩の才能を磨こうとしたら、競翔家、己ちゅうもんも磨かなならん。競翔鳩として存分に生を受けて競翔する環境を与えてやったら、輝竜号、川滝系はその恵まれた資質ですくすくと育つじゃろうが、由香里ちゃんも感じたように、荒々しいその気性を受け継ぎ、自分の本能をコントロールすら出来ん、この閃竜号は違う。何時弾けるか分からん、脆さがある。そやきん、わしは再びこの鳩をすずらん号じゃ思うて、立派に巣立ちさせたいと思うた。この類希なる才能は、光らせる為にこの世に出でたんじゃ、自滅する為にでは決して無い。二人にとったら、眼を背ける訓練や、無茶をやるかも知れん。そやきん、わしを信じて、堪えてくれ・・それがわしの今の気持ちじゃ」

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