変化する日常
「閃竜号の出現に、香月博士とわしは正直驚いた。再びこの競翔界を激震させるかも知れない可能性を秘めた鳩やきんじゃ。わしにとってのすずらん号、香月博士にとっての紫竜号は、二度と出現せんような鳩じゃと思うとったし、事実そうじゃろう。しかし、この血脈は、白竜号、ネバー号・・すずらん号亡き後のすみれ号と言う鳩・・その怪物達を生み出す何かがそこにある。逸早う、そのDNAの存在に気づいて研究に着手された香月博士と違うて、わしには、その何かは感覚的にしか分からん。まして、誰しも未知の世界に足を踏み入れる、寂寥感、孤独感、圧迫感、押し潰されそうな、漆黒の闇には恐怖を感じるじゃろ?その先は未知数・・だからこそ、そこで立ち止まる。それは、自己抑制でもあり、自己防衛反応でもある。わしは怖かった・・その先を見とう無かった。そやきんど、そこへ踏み出さん限り、わしに付きまとう大きな不安や、疑問は見えて来ん。わしはの・・閃竜号を見た時、体に電流が走ったような衝撃を受けたわ。それは、言葉では言い尽くせんし、その何かを表現する事も十分には出来ん。初霜号委託競翔と言う受諾の先に、又わしにこの鳩が立ちはだかったんじゃ。これは、宿命・・香月博士も代弁してくれたように、当に天の声・・わしは、閃竜号を使翔せないかんように思うた、そこにすずらん号で果たせなんだ、何かがあると思うた。何を求めたらえんか、今は分からん、自分で答えを導き出すだけの2年になるかも知れんきんど・・それが閃竜号使翔したいと願ったわしの動機なんじゃ」
言葉を失う佐々木親娘だった。




