変化する日常
「・・ほんでじゅんさんが・・?」
「わしは、感じたんじゃ。その言葉の更に奥に隠されとる、香月博士の苦悩や、気持ちを。紫竜号と言う鳩がここまでに香月博士を成長させ、広い大きな視野で競翔界を見つめる今の憂いを。わしは、自分の競翔を見つめる前に、苦しゅうて、辛うて胸が張り裂けそうになって・・結局逃げた。そこが香月博士とわしの違い。この方はもっともっと辛い現実から目を背けず、そして前を見つめとったんじゃ。そう思うたら、わしは、香月博士に分かりました・・返事をしとった。そのわしの気持ちの分まで泣いてくれたんじゃ、香月博士は・・」
「あ・・」
洋司、由香里が同時に声を上げた。納得出来た・・やっとあの夜・・香月博士の涙の訳が・・
沢木は続けた。
「わしは、この車中で提案した。無理は百も承知、四国でシューマン系の血が濃い初霜号系をお借りして使翔して見たいと。そしたら、香月博士はにこりとされ、ああ・・やっぱり沢木さんは、私が思った以上の方だ。今の私の最大の難問を見抜いて下さっていたのですね?そうなんです、その初霜号系こそ、すみれ号ルーツであるすずらん号に繋がるのです。そして、そのDNAは、未来の競翔界を変え、支えるもの、だからこそ私は、先ほどから大変失礼な言い方をして、沢木さんを挑発していたんです・・沢木さんの力が必要なんです。実は今・・そう言って涙を零された。全てが繋がる訳じゃ・・そこに」




