変化する日常
「いや、由香里、とんでも無い時間に戻んて来るかも知れん。お前は東見よってくれ。わしは、西の空見るきん」
「・・うん・・」
何となく、由香里の感覚では、相当早い帰舎があるかもとは感じていた。しかし、それは感覚的なものであって、ぼんやり頭に浮かぶだけのものだ。そして、戻って来る方向も、洋司が見ると言う西の空では無いかと思っている。だが、口には出さない。由香里の持つ不思議な感性は、確かに周囲も認めているが、それは、感覚的なものに過ぎないと自分では思っているのだった。そして・・時刻は10時、当に、閃光のような垂直落下に近い形で、閃竜号が姿を見せた。西の空から突如として現れ、そして、何事も無かったかのように平然と帰舎したのであった。静寂が訪れる。鳩舎の中の輝竜号と並んで餌を啄む様子は普段と全く変わりが無かった。つまり、閃竜号にとって、この500キロレースは何時もの訓練に過ぎない・・そんな大きなゆとりを感じたからだ。驚きもしなかった。二人はとっくに、この鳩が途方も無い力を持った鳩だと感じている。自分達の今の力量では、使翔出来ない鳩だと思っているからだ。




