変化する日常
好天・・そんな事は、誰もが予想し得た事である。高分速のレースになるだろう・・と。それも、感覚として競翔家ならば分かる事だ。しかし、たら・・れば・・と言う期待感が予想時間を弾き出すのでは無い。沢木に至っては、膨大な情報、データから基づく予測なのである。その信憑性が高い事は、松本も感じている。・・自分を止めてくれ・・強い言葉の表面とは全く違う沢木の、誰よりも大きく、競翔鳩に対する深い愛情。使翔するとは、いかに大変な事なのか、天才と呼ばれる者故に受けるプレッシャーの大きさに、松本はその気持ちを全面的に受けとめていた。完全な人等どこにも居ない。むしろ、不完全だからこそ人は努力し、成長を遂げるのだ。
「由香里、9時来たら、ベランダに出とってくれ」
洋二は2階の由香里に、内線を繋いだ。少し慌てている様子。何かトラブルでも発生したのか?否・・急遽松本に呼ばれて、出かけたのだ。松本の家には10分と車では掛からない。
着いてすぐ、松本は玄関で待っていた。
「済まんな、洋司君。レースの日に」
「いえいえ、由香里も家に居るんで、おいさんこそ、当日じゃのに・・」




