変化する日常
500キロレース持ち寄り日の朝だった。沢木から、洋司に短い内容の電話が入った。
一週間後、閃竜号を引き取りに来ると言う事と、500キロレースは又高分速が予想されるので、早めに鳩舎で待っている方が良い、その時にどっちの方角から鳩が戻って来たのか報告をしてくれと言う事で、用件だけ沢木は早口で伝えると、電話を切った。
洋司はそれから出勤時間となっているので、出かけて行った。閃竜号は前の晩から選手鳩鳩舎に戻されている。幸い、羽先の損傷も回復し、沢木の助言通り隔離したのが功を奏したようだ。
千里眼と言う、一つの事象で先の先まで読める者の事の例えであるが、知識がいかにあろうが、それを正しく使えて、初めて理論の上の実践が成り立つ、又は証明される。
沢木は、その類稀なる記憶力と分析力で、今まで全てを正確に言い当てて来た。その凄さを知るからこそ、洋司は絶対的な信頼を沢木においているのである。
しかし、この世に、完璧・完全なものが存在し得るのか?それは否である・・故に、沢木は自分の予想では・・考えではと言う言葉を、常套句にする。しかし、その常套句の殆ど悉くが現実になる所にやはり凄さがあるのだ。
その沢木は、この朝松本にも声を掛けていた。




