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運命の扉

「ああ・・それで・・」


 環は、香月が頬に流した涙の訳を知った。そして、父の悲しみも分かり、少し胸が痛くなった。


「少し分かった・・じゃあ、何故そんな辛さを知って居られる沢木さんが競翔の世界に・・?その白虎号の仔鳩がすずらん号の再来とでも言うの?」

「私はすずらん号を知りません。ですが、恐らく沢木さんは、その閃竜号の中にすずらん号を見られたのでしょう、そう考え、初霜号系統の委託を同時に提案しました」

「・・つまり、沢木さんも又紫竜号を手にした・・と?」


 磯川の眼が、一変して険しくなった。香月はその眼を見返した。


「はい・・閃竜号は、私が今まで見た数多くのどの鳩のタイプにも該当しません。天は何故、又我々に試練を与えるのか・・沢木さんの慟哭が私に中に蘇り、そして紫竜号を失う辛さに耐えていた少年の頃の、私の姿に重なったのです。紫竜号とは全く違うタイプの鳩です。しかし、より速く飛翔する事を義務つけられたかのような鳩なんです。この鳩を使翔出来る方は、もはや沢木さんしか居られない。その為には、初霜号系は重要なパートナーになれる筈です」


 磯川の眼は更に険しくなる。環もどきっとした。

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