運命の扉
磯川が身を乗り出した。環は、こんな縁って不思議そのもの、何か偶然が必然に変わって行くような気がした。
「紫竜号は、これ以上競翔鳩に求められないような、特異ですが、理想的な体型の上に、非常に知能の高い鳩でしたよね?」
「うん、その通りだ。生物進化の過程では、種の中から、突然的に非常に突出した個体が生じる事がある。突然変異と言うまでには至らないが、飛び越えた存在だよね」
「ええ。そうなんです。しかし、紫竜号には次代に子孫を繋ぐ生殖能力はありませんでした」
「うん・・君の話の先を想像すれば、その白虎号の子孫に特出した鳩が誕生したと・・そう言う事かい?」
環が、にこにことしながら、聞いている。高名な二人だとは父からも聞いて知っている。しかし、鳩の事を話す姿は、少年のようにきらきらした眼をした、楽しそうな顔だったからだ。
「そうなんです。実は、今度手術されるお嬢さんが飼育されていて、沢木さんはもう30年以上前に競翔を止められて居られるんですが・・もっと詳しいルーツを言いますとね・・私が香月系4系統を、将来に向けて世界各国で使翔する為には、今の鳩舎、飼育体制では到底足りません。ですので、先駆けて暁号系を浦ちゃんに託しました。ご存知ですよね」




