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運命の扉

「はは・・講演の資料なら私が貴女に提供しますから。病院へのレポートでしたら、持っていますし、ふふ。そして、失礼ですけど、先程貴女がメモっている内容をちらっと拝見しましたが、非常に理路整然として要点を掴んで居られる。それならこの先の退屈な講演等聞かずとも資料で充分でしょうから」


 鋭い方だ・・環は思った。そしてこんな機会は滅多に無い事。父の客として2度の対面と少しばかりの会話はあるが、磯川則哉と言うこの方も、凄い男性だと感じている。磯川の運転する高級乗用車に、違和感無く環は乗り込んだ。彼女はその点では人を見抜く能力があった。ホテルのロビーで待っていると、すぐタクシーが到着。香月が降りて来た。磯川の横に環が居る事に驚いた顔をしている。


「これは、やはり何かのご縁でしょうか、沢木さん、ご一家とは・・」


 環は深々と頭を下げた。磯川がすぐ今日の縁を香月に伝えると、


「やっぱり、縁があるんだ。どうぞ、どうぞ。磯川さんもきっと何かを感じられたのでしょうね。こうして並んで出会えるには、驚きと共に、不思議な縁が存在するのでしょう」

「ああ、俺も何か感じたよ。この沢木さんには特別のオーラがある」

「そんな・・うちこそ、隣に座られた時から、磯川先生には只者ならぬ気品を感じました」

「はは・・。お上手だ。大変失礼ですが、お年は自分とも余り変わらないようですが・・」

「まあ・・ふふ。うちは今年28になります」

「何だ・・俺より一歳年下ですね、はは」

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