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再会
沢木が帰った後の鳩舎を眺めながら、松本は一人言を呟いた。
「あいつは・・ありゃあ・・やっぱりどえらい奴よのう・・」
次週末の事だった。やはり一端好きな釣りに戻ると、気持ちはどんどん逸るものらしい。洋司は早速釣り用の道具を買う為に、市内でも割りと大きな釣具店に仕事帰りに立ち寄った。
「あれ・・洋司さん?」
声を掛けたのが、丸岡と言う体の大きなずんぐりした男だった。旧釣り倶楽部のメンバーの一人だ。
「おう・・丸かいな、久し振りじゃのう」
洋司より7歳年下である丸岡は、最近釣り大会のトーナメンターとして、結構地元では名前が知れているそうだ。
「何しよったんですか、釣り・・又始めるんかいね?」
「まあ・・ぼちぼちな」
久し振りに出会った旧釣り仲間と言う割には、洋司に笑顔は無かった。




