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再会
沢木が、松本の家を訪ねたのは、それから数日後であった。営業で車を運転する沢木は、割と自由が利く。彼は松本とは、20年以上会った事も無かった。
その松本は、玄関前に型枠を作り、セメントを流し込んで居た。
「おほ・・何しよるんですか、おいやん」
沢木は、自分が競翔をやっていた10代の頃より、老け顔だった松本の事をおいやんと呼んでいた。年が11歳離れては居るが、未だ30代の青年においやん(おじさん)と呼ぶには失礼極まるのだが、松本も又、沢木をじゅんたろべえと呼び、親しい間柄だった。沢木が、どんな相手にも動じない、明るく気さくな人物であったからでもあったが・・
そのおいやんと呼ぶ相手は、既に中年を迎えて、腹も出ている。人相も変わっている。しかし、おいやんと自分を呼ぶ人物は沢木以外に居なかった。少し沢木の顔を凝視しながら、松本が、
「え・・お・・お前、じゅんたろべえか?おい、何しよったんぞ、遠から(縁遠いの意)顔も見せんで」
沢木が、少しずっこけそうな仕草を見せながら、笑う。




