車椅子の少女
「わしの鳩はな、ある人からの預かりものなんじゃ。預かりものちゅうたら御幣もあるきんど、鎌足ゆうて、先頃亡くなった・・わしの連合会では古うから競翔をやっとった人で、大半の鳩は、関東の方へ行ったんじゃ・・佐川ちゅう人の所への。その残りの鳩がわしとこに居るんよ。夜風系ゆうて、普通の競翔鳩と違うて体も大きい、まあ、一風変った血統でな、ほんで、その人が言うのんは、競翔鳩ゆうのは、ようけ飼う必要は無い。選り優った、数羽が居りゃあ、ええんじゃ言うとった人なんよ。由香里ちゃん、その鎌足ちゅう人が、香月博士と会うた言う話は知らんじゃろ?」
「ええっ!あの・・香月博士が、鎌足ちゅう人と?」
由香里が驚き口に手を当てている。
「そうじゃ・ほんで、その時香月博士が連れて来た鳩と交配させたんが、わしの所に居る鳩じゃ。8羽居る。由香里ちゃん、わしは決していじわるを言うんや無いで。又ケチでこなん事言うんでも無いで、分かってや。今からあんたをテストする。それで駄目じゃったら、わしのとこの鳩は諦めてくれ。ほんで他の連合会には強い鳩舎もある。責任持って、そこから種鳩になる鳩を譲って貰うたる。試すような事を言うて済まんのやきんど、わしも鎌足さんの鳩を育てなあかん義務があるんじゃ」