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最終章 追憶・回顧

 松本曰く・・


「じゅんは、駆け足で人生を巡ったんじゃ・・きんど早過ぎる・・今は、悔しい、わしゃあ、ただ悔しいてならんが・・」


 歯噛みする程、皺枯れた顔から止めどなく流れ落ちる涙・・彼の深い悲しみを周囲も感じた。西条も同じであった。

 その頬に伝わる涙は、沢木が遺して来た様々な影響を物語る。人の心の琴線に触れ、その優しい人柄を偲ぶ時、まだまだ彼に教えて貰うべき事は一杯あったのに・・そして、沢木は燧灘競翔連合会の産みの親でもあった・・競翔家達や、数多く人に影響を与えて来たからだった。葬儀時、由香里は余りのショックで床から立ち上がれず、食事も取れない状態で加わる事が出来なかった。その深い関わりとこれまで全ての歴史を思えば、その心の痛手は言うまでも無かった。尊敬し、そして肉親と同様、恩人でもあり、全ての彼女の支えになってくれた人である。ヤマチューは、彼女との深い沢木の交わりを思う時、そして自分もここまで引っ張り上げてくれ、成長させて貰ったその大恩を生涯忘れまいと心に誓うのだった。洋司の落胆し、憔悴し切った顔見ると、ヤマチューの眼からもう涙が止まらなくなった。

 それでも洋司は、ぽんぽん・・ヤマチューの肩を無言で叩いた。


「く・・くぅぅう・・」


 悲しみが連鎖する・・・増幅する。人の生命は明日にも白骨となる身・・そう明記されている仏教の一説を思い出す。浄土真宗西本願寺派の念仏が聞こえる今・・何故、それが沢木なのだろうか・・思わぬ人は居なかった。

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