最終章 追憶・回顧
とりはとりで、環の後押しも勿論あるだろうが、沢木家の長男として、どっしり大きく成長して行っていた。次期社長・・その事も既に間違い無い路線だろうと周囲も納得していた。縁故等全く関係無い。それは、彼自身の才能が大きく開花したからである。
美香とイクちゃんは、結局ゴールインには至らなかった。しかし、その二人は強い信頼関係を築き、やがて数年後、レッスンプロとして第二の人生を送る美香と、女子プロの第一線で活躍する弓長とその道は分かれて行く。
入室して対面に座ったヤマチューに、沢木がにやりとしながら、
「おい、ヤマチュー。そろそろお前、一本立ちせえや」
いきなり沢木に言われたヤマチュー・・この頃は数々の作品を世に出し、忠弥の屋号は高い評価を受けていた。
「え・・わしは、オーナーとずっとやりたい思うて来ました。ほやきん、一本立ちっちゃ・・」
驚き、うろたえる彼・・しかし、そのヤマチューに。
「いや、お前はもう充分に成長しとる。もっと世の中見て来いや。ほんで、由香里ちゃんと一緒になれえ」
「えっ!何言うんかいね、オーナー、わしは、そなな・・」
沢木が笑った。




