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最終章その3 鳩達の潜在意識

「ば・・馬鹿な・」


 鳩達に人間界のような駆け引き等一切通用しない。又存在しない。あるのは、競翔においては天佑とその鳩の資質のみ。そこに人間界たる計略や知略や、権謀術数等用いる事自体が無用の長物。天才磯川が陥った愚策だったと回顧する訓練も、そして沢木自身が、並びようの無い天才的機略を用いようとも、ある一つの存在を発見しただけに過ぎないのである。そこから先に起こる全ての事象は、前述に戻るのである。

 眼の前で、必死に愛鳩達の無事を祈る由香里の姿を見て、沢木は強く心を打たれていた。この純真無垢な愛情、自分にはただ眼の前しか見えなかった過去のすずらん号との歴史。それを知るが故に慟哭の涙を共に流した香月。抗えぬ運命に翻弄されながらも、前を向くしかない今、沢木はそっと呟いたのだった。


「由香里ちゃん、天竜号ちゅうんは、競翔鳩の故郷・・それは由香里ちゃん自身の心にあるもんじゃろう、わしは、今はっきり分かった」

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